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前回の記事に引き続き、「エリック・ミヤシロ Special Talk & Play」のレポートを書いてみようと思います。

第2部はQ&Aコーナーです。
今回のイベントでは参加申し込みの際に質問を受け付けており、その質問が全部で13、さらに会場の聴講者からの質問が5つ、合計18もの質問に時には実演を交えながら丁寧に答えてくださいました。


【Q1】ハイトーンの練習方法を教えてください。
「僕もいまだにいろんな人に聞いてます。」とエリックさん。さらに、「ハイトーンに関する教則本などは全部買って試してます。」と。これには会場の皆さんびっくりしていた様子。
まさかエリックさんが市販の教則本を買って試してるとは思いませんよね。
そして「身体的な条件は人それぞれ違うので、どのやり方が正しいかということは自分にしかわからないと思うのです。」とおっしゃいます。
「なのでどのような練習が自分に合っているかは自分自身で見出すことが大切だと思います。」とのことです。
そして「よく誤解されていることがあるのでお話しておきます。それは、高い音はたくさんの息が必要だと思われていることです。これは間違いではないのですが、そこにポイントを置きすぎだと思います。」と言い、そして「どなたかティッシュを一枚いただけますか?」
1枚のティッシュを受け取ったエリックさんはトランペットを手に取りチューニング・スライドを取り外します。そしてティッシュを細く切り、リードパイプの先端に、パイプの穴を覆うようにたらします。
そして低い「ド」付近の音を吹きのばします。リードパイプの先端のティッシュは当然息に押されて前方に動きます。次にエリックさんはオクターブ高い音を出します。するとティッシュの動きが小さくなります。さらにオクターブ上げ、ハイB♭あたりの音を出します。するとティッシュはわずかにしか動きません。そしてさらに高く、エリックさんならではの音域を吹くとティッシュはほとんど動きません。
(エリックさんはどの音もほぼ同じ音量で吹きました。)
エリックさんは、「このように高い音に行くにしたがって息の出る量は少なくなるのです。」と言い、高い音と低い音の唇の振動の仕方の違いを説明してくれました。高い音のときは唇が小さく細かく動かなければいけないので息の勢いにまかせて出そうとすると唇(振動)の戻りが追いつかなくなり高い音が出なくなるとのこと。なので高い音を小さな音で吹く練習は有効だと言います。
(この時のティッシュを使ったデモンストレーションと同じことを、ジャズ・トランぺッターの辰巳哲也氏がYouTubeで見せてくれているので参考までにリンクを貼っておきます。3分半すぎからです。)
http://www.youtube.com/watch?v=Vn0O5ezIQKU&feature=plcp

【Q2】毎日演奏していく中での身体の疲労対策は?
エリックさんはすかさず「打ち上げです!」と冗談を言い会場を沸かせたのち、「睡眠が一番です。」と答えました。
あとは炭酸水もいいそうです。炭酸水は、血液中に溜まった乳酸を取り除く効果があるそうです。あとは水分を補給することや、血行を良くすることなどがいいそうです。

【Q3】マウスピースは何をお使いですか?
「ヤマハのエリック・ミヤシロ・モデル(EM1)です。」

【Q4】普段どのような練習をされてますか?
「僕はまったく練習してないです。練習きらいなので・・・」と言います。私も昔個人的に同じようなことを聞いたことがありますが、そのときも同じように言われたことを思い出しました。
「でも、常にイメージ・トレーニングはやってますね。BGMなど流れている音楽に合わせてイメージしたり。あとはいつも唇をブルブル振るわせたり、バズィングのようなことをやって常に唇を活性化させてます。」

【Q5】どのように吹いたらトランペットらしい、こもらないきれいな音が出るのでしょうか?
「自分の好きな音色、出したい音色を常にイメージし、身体に染み込ませるようにすればその音に近づいていくと思います。好きなプレイヤーのCDやコンサートをたくさん聴きましょう。」
と、やはりイメージが大切だということを強調されてました。
「あと物理的に考えられることは、マウスピースが深すぎたり大きすぎたりしているかもしれません。マウスピースを見直してみることも必要かもしれません。」

【Q6】安定した音を出すにはどのようにすればよいですか?
「音が揺れてしまうということだとしたら、それは唇や口のまわりの筋肉が原因かもしれません。よくなんでも息のせいにすることが多いのですが、実際はそうではなく口周辺に原因があることが多いです。練習方法は、小さな音で吹くようにしてみてください。そうすることで息に頼ることができないので口の周りの筋肉が良い方向に働いてくれると思います。」

【Q7】中音域で、あたたかい音やファットな音を出すために注意していることはありますか?
「自分の吹きたい音色のイメージを強く持つようにしています。アンブシュアや奏法などのことを細かく考えないようにしています。音楽には様々なジャンルがありますが、それぞれのジャンルに大好きなプレーヤーがいるのでその人の音色をイメージしながら演奏します。モノマネで構いません。モノマネしても自分の解釈で演奏することになるのでその人と同じにはならないのです。それは結果として自分の音になるのでどんどんモノマネしてください。」

【Q8】音の立ち上がりを良くするにはどうすればいいですか?
この質問の意味としては、音が発せられた直後に音程や音色が変化してしまうのをどのように防げばよいか、という質問だと解釈し、エリックさんは回答してくださいました。
「音を発音したあとに口の中のどこかが動いてしまっていることが考えられます。特に考えられることはタンギングです。タンギングは「突く」というイメージを持たれることが多いのですが、実際には「(舌を)放す」というふうに考えた方がいいです。」

【Q9】ライブなどで大切にしていることは何ですか?
「まずは先ほど(第1部で)お話したように、お客様に対するステージ上のマナーですね。」これは、第一部で紹介されたバディ・リッチやメイナード・ファーガソンから教えられたステージ・マナーのことをやはりここでも強調されてました。
「そして、われわれはお客さんとのコミュニケーションや、メッセージを伝えることが大切です。音楽を通してお客さんに何かを感じ取ってほしい。そのためにはまず自分が楽しい気持ちや悲しい気持ちなど、感情を持って吹かなければ音に出てこないと思います。そういう気持ちを大切にしています。」

【Q10】1ヶ月ほど前から音域を広げるために1日15分~30分ペダルトーンを練習するようにしているのですが、ペダルトーンに関するアドバイスをお願いします。
「ペダルトーンの練習は、良い結果が得られる人とそうでない人とはっきり分かれます。ちなみに僕はダメなほうなんです。でも、ペダルトーンを勧めるプレイヤーもたくさんいます。なので、ペダルトーンの練習が自分に合っているかどうかを客観的に判断することも大事です。」と言います。
そして、「ペダルトーンは普通のアンブシュアで吹かないと意味がないと思います。」と言い、エリックさんは実際にトランペットでペダルトーンを吹きます。チューニングのB♭あたりから音階で下がっていき、べダル音域まで下がります。ペダル音域に入ったあたりから口を極端に尖らせてペダルB♭まで吹いて見せます。「このようにアンブシュアを崩して吹いても意味がないと思います。」と言い、次に普通のアンブシュアのまま下がっていきます。するとトランペットの通常の最低音から3度ぐらい下がったところでそれ以上下がれなくなりました。「僕は普通のアンブシュアではこのぐらいまでしか下がれないんです。普通のアンブシュアを崩さないと出ないのであれば、その人はペダルトーンの練習は向いてないのかもしれないです。もし普通のアンブシュアで吹けるのであれば、もしかしたら良い結果を得ることができるかもしれません。でもやりすぎは良くないと思います。15分はやりすぎかもしれないですね。」

【Q11】唇、アパチュア、歯、口の容積、複式呼吸などと、音程、音質の関係を教えてください。
「演奏に関わる身体の各要素のバランスの話でしょうか。どれもすべて大事ですのでどれか1つ欠けても良い演奏はできません。」と言い、質問の意図から外れるかもしれないと前置きした上で、効果的な練習方法を紹介してくれました。
「たくさんのことを休みなしで練習するのは良くありません。なぜかというと、練習したことを身体に覚えさせる時間を与えてあげないといけないからです。おすすめなのは、吹いた時間と同じだけ休みを入れながら練習することです。3分吹いたら3分休むということです。そのための良い練習方法として、パートナーと一緒に2人で練習することです。同じ課題を交互に吹けば、相手が吹いている間は休めるのです。そして、相手が聴いているのでミスしないように集中して吹くことができます。」
そして強調して付け加えました。「練習は量ではありません。質です。」

【Q12】トランペットと出会っていなかったら何をしていたと思いますか?
「まったく考えられないですね。」と言い、土屋氏が「質問者が『ダンサーとか』と書いてますが?」と言うと、エリックさん「僕の踊り見たいですか?」と返し、会場を笑わせます。
そして、「トランペットを吹いてないとしても何らかの音楽関係でしょうね。」土屋氏がさらに「トランペット以外の楽器だとしたら何がお好きですか?」と聞くと、「トロンボーンが好きですね。あとピアノも好きです。」とのことでした。

【Q13】何歳ぐらいまでトランペットを吹けると思いますか?
「死ぬまで吹けると思います。先ほど言いましたように身体的なことを考えても特別な肺活量は必要ないのですし、実際、重度のぜんそくで片方の肺しか使うことができないのに現役で活躍されている有名なトランぺッターもいます。また、年齢を重ねることでその人生経験から出てくる『味』みたいなものも増してくるので自分の中で音楽を持っている限りずっと吹けると思います。」

ここで事前に受け付けた質問は終わりました。そして残った時間は会場のお客さんからの質問に答えてくれることになりました。

【Q14】ビブラートの練習方法を教えてください。
「ビブラートには2種類あると考えてください。」と言い、1つずつ実際に楽器で吹きながら説明してくれました。
「1つは右手で楽器を前後に揺らして唇のテンションを変化させ、音程の変化でビブラートをかけます。これをピッチビブラートと呼んでます。もう1つはモジュレーション・ビブラートと言いますが、歯と歯の隙間を開けたり閉じたりしてワウワウという感じに音を変化させます。これは音程は変わらず音の波形が変化します。」
そして曲の種類によって使い分けるという説明を「オーバー・ザ・レインボー」や「マカレナの乙女」などを実際に吹いてビブラートを聴かせてくれました。ちなみにこの2曲では前者はモジュレーション・ビブラート、後者のようなドラマチックな曲はピッチ・ビブラートが合うと言われました。
また、練習方法としては、たとえばメカニカルな教則本の音階パターンの練習など、つまらない練習(!)などもビブラートをかけて吹くことで効果的なビブラートの練習になると言います。

【Q15】シェイクをかける際のアドバイスをお願いします。
「シェイクはもともとルイ・アームストロングがビブラートを極端にやりすぎて音が上にひっくり返ってしまったのが発端と言われてるみたいです。」と意外なお話を聞かせてくれました。
「なのでシェイクはビブラートの延長と考えた方がやりやすいです。ビブラートの説明で言いましたように、歯と歯の間をビブラートのときよりもっと極端に動かすようにします。スラーの延長と考えない方がいいと思います。もう1つの方法は、やはり先ほど言いました楽器を揺らすビブラートがありますが、これも極端に動かすとシェイクになります。」と言い、実際にやって見せてくれました。
そして、「どうしてもシェイクがかからないのであれば、ある音をイメージし、マウスピースだけで音を出しシェイクします。そしてシェイクしたまま反対の手であとから楽器をそっと差し込みます。」と言い、これも実践して見せてくれました。

【Q16】ライブなどでバテてしまったときはどうしてますか?
「まずはバテないようにペース配分を考えることが大切です。アンコールの最後の音をゴールとして、そこまでのウォーミングアップやリハーサルも含め、すべての配分を考えるようにしています。でももしバテてしまったときは、唇にとって必要なのは新鮮な血液です。唇をブルブルと震わせることや、たくさん水分を摂ることが必要です。」

【Q17】トランペットとフリューゲル・ホルンを持ち替えるときの注意点を教えてください。
「最近ピッコロ・トランペットやフリューゲルに持ち替えることが多いのですが、それぞれまったく別の楽器と考え、どの楽器でも教則本などを練習してます。フリューゲルでアーバンやクラークをやったり。あとはトランペットとフリューゲルのマウスピースを同じリムサイズにした方がいいと思います。そうすればフリューゲルからトランペットに戻れないということがなくなると思います。」

【Q18】メイナード・ファーガソン氏との数々の共演の中で、一番楽しかった(素晴らしかった)ライブ、あるいは曲は何ですか?
「『これが一番』というのはないですね。何度も共演させて頂きましたが、毎回違う感動がありましたのですべてが素晴らしいものでした。ファーガソンはトランぺッターというだけではなく、バンドリーダーという意味でも本当に素晴らしい人でした。また、お客さんに対してのエンターテイナーぶりも本当に素晴らしく、そのあたりを意識して彼のライブ映像を見てみるとまた違った素晴らしさを感じることができると思います。」


以上でQ&Aは終了となりました。
今まで私は何度もエリックさんのクリニックには参加してきましたが、毎回質問コーナーはあるもののこんなにたくさんの質問に答えられたのは初めてだと思います。

最後にエリックさんからお客さんへのメッセージを話されました。

「奏法のことや楽器のことなど、"オタク"と言われるぐらいとことん拘り、とことん調べ、勉強し尽してください。でもステージに立ったらそれらのことは一切忘れて音楽に身を委ねられるようにしてください。そうしないと自分の音楽を聴きにきてくれているお客様に失礼だと思います。ステージに上がったら音楽に集中するようにしましょう。」

このメッセージはエリックさんを象徴するようなお話だと思います。また、そのエリックさんがおっしゃるだけに非常に説得力があります。

そして最後に1曲、Jeff Tyzikの曲をフリューゲルでしっとりと聴かせてくれました。Jeff Tyzikは私の大好きなトランぺッターですが、この曲聴いたことなかったです。なんのアルバムに入ってるのだろう?
エリックさんの透き通るようなフリューゲルの音色に癒されました。

そして最後に握手&サイン会が行われ、100人近いお客さんが列をつくり、一人ひとり憧れのエリックさんとコミュニケーションをとられていたようです。

このようにして銀座山野楽器で行われた「エリック・ミヤシロ Special Talk & Play」はあっという間に終了となりました。

ここで書いた内容は、会場で私が必死にとったメモと記憶をもとに書いたものなので実際の表現とは違いますし、内容も実際はもっと詳しく話されていたということを付け加えておきます。
ともあれ非常に充実した内容のイベントでした。

◇◇◇今回のナビゲーター、土屋氏のブログ「bigband!日誌」にも写真つきで当日の様子が紹介されてます。◇◇◇
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